REDD+に関する些細な事

 名古屋で生物多様性条約の会合が行われている事に絡めて、金銭援助と引き替えに途上国において森林の開発を一定期間行わない事で、そこの木に含まれている炭素がごっそり二酸化炭素として放出されるのを予防するという、REDD+という取り組みについての閣僚級会合についての報道がいくつかあります。
 非常に微細な事で申し訳ないのですが、それらの報道の中に勘違いを生じかねない事がしばしば書かれていたので、自分用の勉強を含めてちょっとメモを残しておきます。


 REDDとは"Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation"つまり「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減」の略称です(参考:国連REDD計画(英語))。途上国からの二酸化炭素排出は今後ますます大きな問題となってくると考えられますが、それらの国ではしばしば、その排出の少なからぬ部分が森林破壊によって引き起こされていると推定されています。この数字は、たとえば2006年のスターンレビューでは、2000年における世界の温室効果ガス排出量の18%(厳密には微妙に違いますが、そのほとんど)がこれによるとされたそうです(出典:REDD @ EICネット)。そして同時に、森林の開発をあきらめさせる補償費用のコストは、先進国で排出量を削減する努力をするよりも費用対効果がかなり良いと言われています。もちろんその金額は、現地の政府が「これだけくれるならまあ開発をやめても良いかな」と満足できるものになっているはずであることを留意してください。
 そこで、たとえば植林CDMとは違った形で、この補償を支払うことで自国での排出枠を少し拡大しても良いことにする、という取り決めがREDDと呼ばれています。
 途上国の開発を妨げる形にもなりかねないなどの懸念もないではないですが(実際、現地のパーム椰子プランテーションや鉱山の開発を行いたい資本家の反対なども当然生じます)、こうして入ってきた資金で森林保全の雇用を行ったり、より環境破壊の小さな分野への投資などに振り分けられる事が出来れば成功と言えるでしょう。


 さて、ここまで森林と二酸化炭素の話しか出ていません。生物多様性とは何の関係もありません。ではなぜ名古屋と関係するのか。それが、しばしば見落とされるREDDの後の"+"記号なのです。
 どうせ森林保全するならついでに生物多様性保全の機能も兼ねてよ、というのが、このREDD+(レッドプラス)の意義なのです。この名称が定着したのはCOP 13(もちろん気候変動枠組み条約の方の、です)のバリ行動計画から。もちろん、上記の会合で話し合われているのもこちらです。

参考:「森林保全と気候変動に関する閣僚級会合(結果概要)」@外務省

というわけで、報道の中にあった勘違いを生じかねない事、もう想像は付きますね。この+記号を抜いて報道しているところが少なからずあったのです。日本の新聞はすぐにネット記事が読めなくなりますが、一応目に付いた範囲でリンクを張っておきます。


REDD+(よくできました)


REDD(もう少し頑張りましょう)


というわけで、皆様、REDD+をよろしくお願いいたします。