序論

震災による福島第一原発の災禍によって、にわかに反原発の動きが活発になりました。
 どのエネルギー源を選ぶかは国民の決めるところであって私がどうこう言うことではないのですが、日本において気候変動懐疑論がしばしば反原発と結びついてきた事を見ると、この流れは警戒せざるを得ません。
 日本における気候変動懐疑論の始祖の一人として槌田敦を挙げることに異論のある人は少ないでしょう。この人はもともと70年代から反核運動の人で、気候変動の話を始めた時も「原発は気候変動の防止に役立たない」という絡み方でした。これはもちろん、政府の原発PRへの反発であったわけです。このように「合目的的」な気候変動懐疑論を反原発に利用する人というのが比較的目立ちやすいというのは、日本の懐疑論の特徴的なところかもしれません。欧米では化石燃料産業に結びつく事が多い気がしています。

 ともあれそのようなわけで、原発騒動の落ち着いてきた頃に懐疑論がまた勢いを付けるのではないかと心配していたところ、7月末に表題の書籍が出ていたので、早速買って徹底的に間違いを正して公開しておこうと思いました。既にやや遅きに失した観はありますが、ともあれ書き始めてみます。